ソリッドとは、「硬い」方面の意味なのか、「柔らかい」方面の意味なのか。

2018年11月10日

ギターの話をするときに、ややこしいと感じる言葉があります。

今回は「ソリッド」です。

硬さとか鋭利さを感じさせる場合に使うこともあれば、柔らかさや温かさのようなものを感じさせる場合に使うこともあります。

ほぼ逆の意味で使われるので、ややこしいんですね。ギター歴が長い方でも、逆の意味で使われる場合があることを意識していない方も意外といらして、そのせいで話が噛み合っていない、という場面を見たことがあります。

なぜ、そういうことが起こるのでしょう。

硬さを表す場合

ボディの構造のソリッド

ここで突然、ギターのボディの構造のはなしになりますが、大きく「ソリッド」と「箱もの」に分かれます。別の分類もあるでしょうけど、ここではそういうことにしてください。

ボディ構造各種
左から、フルアコ(MFA)、セミアコ(MSA)、セミホロウ(NTL-SH)、ソリッド(EOS)

ソリッド・ボディというのは、板きれから、取り付けるパーツ分くらいの部分をくりぬいたもので、音が共鳴するための空洞を持たない構造のものです。共振する部分が少ないのでハウリング等に強いということもありロック方面ではソリッド・ボディのギターが好まれて使われます。

単にエレクトリック・ギターという場合は、多くはソリッド・ボディのことを指しています。当店でも在庫の8割くらいはソリッド・ボディです。

一方、箱モノというのは、そのままですが木箱のように空洞がある構造のものです。フル・アコースティックというボディの厚みがあって空洞が大きなものや、セミ・アコースティックという厚みが薄く空洞が中くらいのものがあります。空洞部が広くあるおかげで、生音でもそれなりの音量がありますが、先ほどの逆で、ハウリングなどが起こりやすいです。

こちらを指す場合は、単にエレクトリック・ギターとはあまりいわず、セミアコとかフルアコとかいう場合が多いですね。

いわゆるアコースティック・ギターも箱ものではありますが、あれはアコースティック・ギターというもので、あまり箱ものとはいわないと思います。

少し余談ですが、ソリッドと箱ものの中間くらいの、空洞の割合で多くの場合は呼び方を変えているのだと思いますが、フルホローとか、セミホローとか、チェンバー加工とかいうのは、ソリッド・ボディを多めにくりぬいて、空洞部分を増やしたものの場合が多いと思います。

ということで、箱ものと比べると、ソリッドのほうが、特に生音で弾いた際に音や楽器が振動する感じが「硬い、するどい、詰まっている」という感じがするので、「硬さ方向」の意味合いになります。

パーツのソリッド

その延長で、エレクトリック界隈では、硬さ方向のことをソリッドという場合が多く、例えば、ペグやブリッジなどのパーツについてもそうです。

軽めで、ビス2本で止めるクルーソン・タイプと、重めで筐体に組み込まれたネジでがっちり楽器本体に取り付けて更に1本のビスでも止めるロトマチック・タイプを比べたときに、後者の方がソリッドな音色になる傾向がある、みたいなことがよく言われます。

ペグの種類
左がクルーソン・タイプ、右がかっしりとしたロトマチック・タイプ

ブリッジも、スチールブロックだとか、ブリッジプレートが厚いとかいうことで、重さ/硬さが増し、音がソリッドになる傾向がある、というのも同様ですね。

右側の方が金属板の厚みがあり、がっしりしていますね。

重さとか硬さとかいう要素は、楽器全体の振動を抑える方向に働く場合が多く、音が硬い方向に振れる場合が多いと思います。音に芯が欲しい、というようなリクエストを頂くと、ペグを重くしましょうか、ブリッジやテイルピースを重くしましょうか、というような話が出たりしますね。

ちなみに、ペグとかを変えて、本当に音が変わるのか?という疑問がおありかと思いますが、それはそれで長くなるので、また改めたいと思いますが、僕の結論は、1個1個のパーツ交換はそんなに効果がなくても、同じ方向性でパーツを3つ4つと変えて揃えていくと、最終的には結構変わることもありますよ、感じ方には個人差がありますけど、です。

さて、ここまでは、「ソリッド=硬い方面」ということを書きました。

柔らかさを表す場合

ボディ・トップ板のソリッド

ではまた突然、箱ものギターのボディのトップ材のはなしになりますが、大きく「単板(たんぱん)」と「合板(ごうはん)」に分かれます。

縦50センチ、横40センチ、厚さ1センチくらいの板があったとします。

2ミリの薄い板を5枚重ねて貼りあわせて厚みが1センチある、というようなものを合板と言います。

1枚の板の厚みが1センチあれものを単板と言います。縦方向、横方向は貼り合わせてあっても関係なく、厚み方向に単独か複数か、ということです。

何となくお分かりいただけると思いますが、楽器としては単板がありがたがられることが多いですし、価格も高い場合が多いと思います。

単板であれば何でも良いわけではないですし合板が悪いとも思いませんが、これまた長くなるのでこのくらいにしておきます。ちなみにFGN MFAやMSAのトップ材は合板です。

そして、ここで大事なことは、合板と単板ではどちらが硬いのか、ということです。どちらでしょう?

質問の仕方が下手でバレてしまったと思いますが、合板の方が硬くて丈夫なんですね。貼り合わせる際に木目の方向を90度違えて貼り重ね、また接着剤で固まることで、単板よりも安定的に硬く、耐久性が見込めます。合板の方が、ボディトップが凹むというような問題は起こりにくいです。

その比較的に硬い合板のことを英語ではプライ・ウッドと言い、柔らかい場合が多い単板は先ほどと同じ要領で、空洞の無い板切れなので、ソリッド・ウッドと言います。

はい、「ソリッド=柔らかい方面」に変わりましたね。

ソリッドの取り違え

例えば、フルアコをご覧のお客様が「単板」という意味で「このギターはソリッドですか?」とお尋ねなのに、店員さんが「(フルアコなのでボディの構造は)ソリッドではありません」というような行き違いが起こりえます。実際には全く会話が噛み合っていないのに、表面上は成り立ってしまうんですよね。

音についてもそうで、アコースティック方面では、単板の音、ということで、木材らしい音色、柔らかく、丸みがあって、温かみのある音色をソリッドの音と言ったりしますが、エレクトリックが念頭にあると、意味を逆に取り違えてしまします。先ほどの例ですと、店員さんが「(フルアコなので)ソリッドな音ではありません」と答えてしまうことがあり得ます。

エレクトリックでソリッドな音というと、ガキーン、バキーン、ジャキーンみたいな方向のことを指しますもんね。

ちなみに、僕は時々「木材感」なる怪しい言葉を使います。今後も出てくると思いますが、「木材感のある音色」とか「木材感が強く感じられるボディの振動」とかですね。そんな言葉は存在しないデタラメ造語ですが、これは「ウッディな雰囲気をソリッドと書いてしまうとややこしいな、回避しよう。どういうと伝わりやすいかな」ということで使い始めたんですよね。どうでもいいことですけど。

まとめ

やや乱暴にまとめますと、ロック方面ではソリッドが「硬い」という意味合いで使われることが多く、アコースティック方面では「柔らかい」という意味で使われることも多い、ということです。

エレクトリックもアコースティックも両方に少しずつ通じていれば起こらない、もしくはすぐに気づく誤解ですが、エレクトリックだけの方と、アコースティック系だけの方の会話でソリッドという単語が出ると、すれ違ってしまう場合があります。

ということで、うっかりすると意味を逆にとらえてしまってトンチンカンな会話をしてしまうかもしれない、ややこしワード「ソリッド」についてご案内しました。

本当は、もう少し延長戦がある予定でしたが、すでに随分と長くなってしまったのでおしまいにします。ここまで読んで下さいって、ありがとうございました。少し話を単純にし過ぎてたり、いろんな話が混じったりしていますが、何となくでも言いたいことが伝わればうれしいです。

ってなことで、今日はこの辺で。
また次回~。